「日本のルールは違うんだからね」――ヌートバーが明かしたWBC秘話 侍ジャパン合流直前に母・久美子さんから授かった“教え”

日本中でフィーバーを巻き起こしたヌートバー。彼が色褪せないWBCの思い出を語った。(C)Getty Images
日本が世界の頂に立ち、列島を熱狂させた2023年の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。大谷翔平(現ドジャース)やダルビッシュ有(パドレス)など多くのタレントを擁した侍ジャパンの中で、異彩を放ったのは、日系人選手として初めて代表メンバーとなったラーズ・ヌートバー(カージナルス)だった。
【動画】『ガンバリマス!サー、イコウ!』侍ジャパンの士気を奮い立たせたヌートバーの”円陣声出し”の様子
メンバー選考に先立って、「他の国で育って野球をやっているなかでも、人と人はつながっていて仲間」と野球のグローバル化を図った栗山英樹監督の意向もあって、代表に抜擢されたヌートバー。懸命に日本語をマスターしようと励む姿や、異文化に馴染もうとする姿勢は人々の胸を打ち、ミドルネームの達治が由来となった「たっちゃん」の愛称は日本中に浸透した。
まさに時の人となった。そんな忘れ時のWBCは、当人にとっても色褪せない経験となっている。現地時間6月6日にドジャースのムーキー・ベッツがホストを務めるポッドキャスト番組「On Base with Mookie Betts」に出演したヌートバーは、「あのチームでプレーできたことは、本当に最高だった」と回想している。
もっとも、チーム合流まで「Super nervous(めちゃくちゃ緊張してた)」というヌートバー。「あの場所に行くってだけで緊張していた」とも言う背景には、日本人の母親である久美子さんから授かった“教え”があった。
「日本に向かう前にうちの母親から言われたんだ。『いい、よく聞きなさい。やっちゃいけないこと、絶対に守らなきゃいけないことがあるからね』って。『ちゃんとしなさい』って念を押されたんだ」
久美子さんの強い言葉を受け、「飛行機に乗っている間は、ずっと『俺は家族にだけは恥をかかせるわけにはいかない』って考えていた」というヌートバー。さらに「日本代表としてプレーする以上、家族の名前を汚す真似だけは絶対にできないと思っていた。負けることは仕方ないにしても、彼らに敬意を欠くような振る舞いだけは絶対にしたくなかった」と明かしている。